<STVV 立石敬之 × TECRA 今井豊和 対談 >

■日本を出て海外で事業をやる意義は?

(立石)日本のクオリティに自負を持っていて海外と比べても遜色ないと自負していた。当初は海外に送り出す立場だったが、今は自分たちも拠点を世界に移して根を張って戦っている。

(今井)日本のモノづくりに対する姿勢は素晴らしいものがある。今はその姿勢を海外にインストールすることを続けているが、その過程で『日本良いな』と思ってもらい、最終的には海外の労働者を日本に呼び込むことを目標としている。

久保:立石さんはサッカー、今井さんは建設事業と、御二人は自国でやっていたことをあえて他の国でやられていますが、その意義は何なのでしょうか?

立石敬之:「日本人頑張れ」という考えの元で企画をスタートさせたんですが、僕は自分が生まれ育った日本という国に自信を持っていまして、スポーツを通じての日本のモノ作りやクオリティ、プレイヤー、ビジネススタッフというものは、海外と比べて絶対に負けないと思っています。もしかしらた周りからの評価は高くないかもしれないですが、それに対してチャレンジをしていきたいなと思っているんです。

久保:長友(佑都)選手のように日本から海外へ人を送り出した立場から、海外から来る人を引っ張る立場に変わりましたね。そのあたりはいかがでしょうか?

立石敬之:そうですね。これまでは送り出した後は「頑張ってこいよ」という感じで、その後の彼らの体験談を聞いて「大変だな」とは思っていたんですけど、今は自分が海外にいるので、彼らと同じ目線で「俺たちも一緒に闘っている」と意識はありますね。

久保:「よし、行ってこい!」と送り出したとしても、失敗する例もあるかと思うのでサポートする姿勢が大切だということですね。

立石敬之:日本人選手はだいぶ活躍していますけど、同じくらいの数が失敗して日本へ帰ってきています。その理由が、力がなかったからなのか、または対応能力や順応性に問題があったのだとは思いますけれど、選手によっては入り口のところを少しサポートして自信を持たせるだけで、そのまま走ってくれることもあるので。例えば鎌田(大地)、遠藤(航)あたりがそうで、次のステージにきていると思います。

久保:建設事業の場合、途上国が非常にプロフィッタブルだということはわかるんですけど、精密な質の日本人を相手にしていた商売を、ルーズな国に行ってやるのは困難なことだと思います。それでも海外でる理由はなんなのでしょうか?

今井豊和 :自分が海外に出て思うことは、日本の技術やモノ作りに対する姿勢は素晴らしいということなんですね。ただ、見せ方はあまり上手くないと思います。なので、東アジアへ技術だけを渡しにいくのではなく、労働環境が悪いのでそれを整えたり、日本でのやり方を理解してもらうことも必要なのではないかなと思います。というのは、日本は最終的に外国人労働者の人たちを受け入れていかないと、日本の建設業は成り立たないと僕は思っているんです。ですが、日本が外国人労働者の受け入れ態勢だけを整えて、実際に日本でどういう仕事をするのかわからない中で来てもらっても、彼らが仕事を続けていくことは大変だと思うんですね。例えば、日本の建設現場では、現場を整えて清潔にしてから作業を行います。そういった細かいことを、僕たちが実際に海外へ行ったときに現地の人に教えて、理解して頂くことが大切なのではと思っています。

■日本のクオリティを海外に!と思っていても、海外ではチームプレーが欠ける傾向が見て取れる。そのあたりはいかがですか?

(今井)日本では『次の人のために』という精神で、現場が清潔に保たれている。海外(モンゴル)ではまだまだやりっぱなし。みんなで掃除しようと働きかけても、すぐに途切れてしまう。

(立石)STVVでは当初ロッカーチームの使い方が綺麗だとニュースになったこともある。それくらいチームを想って環境を整えることに無頓着な個人がスタンダード。今後グローバルな世界展開が予見される中で、日本人のそういった資質が世界を引っ張る素養を秘めていると感じている。

久保:建設現場の環境を整えるということは、サッカーに置き換えると、選手のパーソナリティやメンタリティを整えるということに繋がりますね。

今井豊和:現場に優秀な方がいらっしゃったとしても、1人では絶対にビルは建たないですよね。何百人という人が携わり、何十種類もある仕事を職人さんたちがひとつずつ終えて次の人に渡していく……そうやって建物は完成していくので、自分たちの仕事が終わったら、次の人が少しでも仕事がしややすいように現場を綺麗にしてから渡すなど準備することが大事なんです。それができると、最終的に良い現場で自分も働くことができるということを理解してもらいたいんですけど、実はモンゴルはまだやりっぱなし(の現場)がほとんどです。

なのでモンゴルに行く度に毎回一緒に掃除をするんですが、最初は10人いても、振り返ると5人しかいなかったりする。誰かのために仕事をしようという意識が少ないのかなとは感じますね。

久保:チームのためにもなるし自分のためになる、という気持ちに欠けているんですね。サッカーの場合、海外と日本のやり方の違いはありますか? 

立石敬之:先ほど今井社長がおっしゃっていたように、自分がヨーロッパへ行ったとき、選手たちのロッカーが凄く汚かったんですね。そのときに使ったら綺麗にする、といった日本人からすると当たり前のことができないんだと思ったことがあります。一度、日本代表が注目され、STVVのロッカーの使い方がニュースになったこともありました。それと労働組合なども関係していますが、就業時間になると仕事をほったらかしにしてでもパッと全員いなくなるんです。最初はそれが凄くストレスで、社員の人たちの働き方に戸惑っていたんですけど、でも今は僕がそれに合わせるようになりました。今後、Jリーグが外資から資本を得ようとした場合、外国人の経営者が入って来ることになりますが、そうなると日本人が逆の立場になってくる。これからはいろいろなところでグローバル化が考えられ、働き方もですが国境がどんどん無くなっていくと思います。その中で日本人はリードできる部分を持っていると思います。なので僕もこれから更に勉強していかなければいけないし、僕は預かっている彼らの契約の時間の中で、どれだけ生産性を高めていけるか考えないとと思っています。

■サッカーでは海外で活躍する選手が見られる様になってきた。建設業界ではどうか?

(今井)

日本ではそもそもビルを建てるライセンスを取るハードルが高い。ライセンスを取ってそこそこ満足してしまって、『建設業界のニュースタンダードを作ろう』と思っている人はまだ少ない。かつ海外に出てまでやろうと思っている人となるとまだまだ母数が足りないし、一旦海外に出ても劣悪な環境や商慣習の違いに早々に諦めてしまって日本に戻ってしまう人が多い。

久保:サッカー選手の場合、ヨーロッパに行く事例がありますが、建設業界ではなかなか事例がない。日本の建設業界に携わる人が他の外国で活躍するということはなかなか難しいことなんでしょうか?

今井豊和:難しいことでもあります。先ほどライセンスに関して、サッカーの業界は凄くしっかりしているとおっしゃっていましたが、日本の建設業にも借用権などライセンスがいろいろとありまして、それがないと根本的に日本にビルを建てることができないんです。ですが、日本の場合は免許を取ることが目標になってしまって、次のステップに進もうという人は少ないですね。

日本にいれば何かしら仕事はあるので、ライセンスを取るための知識は凄くあっても、それをどう伝えていくかまでは考えていないことが多い。

なのでそれをどう吐き出していくかは課題でもあります。僕たちの中では当たり前のことも、海外では当たり前ではなかったりするんです。それを変えていかないといけないんですが有志でやっている人たちは、しびれを切らして帰ってきてしまう傾向にあります。

立石敬之:「しびれを切らして」とおっしゃいましたけど、本当にそんな感じですよね。

今井豊和:今は仲間が増えていろいろと形になっていますけど、僕たちが初めてモンゴルへ行って体制を整えたときに、何百人と現場に人がいる中で、日本語を話せる人たちが2人しかいなかったんです。そうなると僕言っていることがきちんと伝わっているのか不安になったこともありまして、、、

海外の現場でどう上手く伝えていけばいいのかを考えさせられたことが3年間ほどありました。

■どうすれば日本の建設業界のプレイヤーが世界で戦える様になるか?

(今井)海外の建設現場においては、『日当いくら?』で働いている人がまだまだ多いので、自分の仕事が終わればすぐに帰ってしまう。本当は次の人のことを考えて、全体調和を考えて、動けばスムーズに行くのだけれども、まだまだそのステージには来ていない。現段階では、旗振り役が現場で働く労働者の方一人一人と対話をして底上げしていく必要がある。

久保:どのようなことを変えていけば、日本の建設業界の方が世界で活躍できると思いますか?

今井豊和:日本だと大手の建設会社がいて、実際に手を動かしてくれる現場の人たちがいます。サッカーで言えば、試合に出る人たちがいて、裏方さんがいてということになると思うんですけど、その手を動かしてくれる現地の人たちと、日本人が海外に行き直接対話をするようにならないと本当にやりたいことは伝わらないのかなと思います。

久保:官僚制のように社長が役員に伝えて、役員が社員に伝えてというようなことではなく、リーダー自ら床を貼っている人たちと会話できるくらいでないと、変えていくことができないし、受け入れられていかないということですね。

今井豊和:海外の場合、現場で手を動かしている人たちの大半が日当で働いている人たちなので、仕事が終わろうと終わらなかろうといなくなってしまうんですが、その人たちが現場で「そろそろ材料がなくなりそうだな」と思ったらそれを次の人に伝えないと、そこから上の人に伝わるまで時間がかかるので、その間に材料がなくなってしまい作業が止まってしまう。そうならないようにするには、上層部の人たちが手を動かす現場にいる人たち、いわゆるプレイヤーと話をすることが大切なんです。

■海外でサッカーチームを経営するとは?

(立石)最初の1年は日本クオリティを求めすぎて逆に自分が孤立する感覚を覚え、ストレスを感じていた。2年目になって『いかに現地の人たちの能力を最大限発揮させるか?』を基軸に置くとだんたんスムーズになってきて、3年目でようやく形が見えてきた感覚。

久保:立石さんは、ご自身が経営のリーダーとして海外へ行かれましたが、どういうところに介入ができて、逆にどういうところに苦労されましたか?

立石敬之:スタートの感じは、今井さんと同じでした。彼ら(現地スタッフ)の働き方が最初は理解ができなくて、伝えるにしてもどのスタッフに何を伝えていいのかまったく情報がなくて孤立している感じはありました。最初の半年、1年くらいはそれが本当にストレスで、当初構想したこともほとんどできなかったんですが、2年目くらいから、僕が求める基準に合わせるのではなく、彼らの能力をできる限り最大限に発揮させるにはどうしたらいいのかと思うようになりまして、彼らが気持ちよく仕事ができるよう、自分で現場へ出向き、自分の目で状況を見て指示を出すようにしました。そういったことがあって最初はチーム作りが遅くなってしまったんですが、今は信頼できる人たちをゆっくり育てて、見極めていっている感じです。そこに行き着くまでに3年くらいかかりました。

■以前はサッカーで欧州リーグに行くプレイヤーは限られていたが、最近は増えてきた。心の持ちように変化はあると感じていますか?

(立石)

成功している(と感じる)人は本当に覚悟を持っている。本当の意味で覚悟と準備をしているプレイヤーは全体の3割程度ではないか。

久保:ヨーロッパの一部リーグに行ける人は、昔から凄く限られていると思います。ですが日本人選手が海外で活躍されていたとしても、それを知らないという人がたくさんいるという状態でもあると思います。長谷部選手や、長友選手が海外へ行ったときの心の持ちようと、今の選手を比較して、変わったと思う面はありますか?

立石敬之:良くも悪くも両側面あります。成功している人は本当に覚悟を持ってやってきたと思いますし、STVVに中村敬斗という19歳の選手が入ってくるんですが、僕は彼のことを17歳の頃から知っていますが、彼はその頃から「将来はヨーロッパでやる」と心を決めて準備をしていました。日本のサッカー業界の場合、まずはW杯で活躍をしてから海外へ行く、という感じだったので、メンタリティも覚悟を持っている人が多かったと思うんです。ですが最近は、周りにサポートされながらいい選手になったけど、本人の覚悟と準備が足らないという選手も多いんですね。日本人のほとんどの選手が「将来はヨーロッパでやってみたい」と言いますが、本当に準備している選手は、実際には3割程度かなと思います。

■海外ではショーウィンドウとしての役割を持つリーグもあると思いますが、育成の意味合いを踏まえるとどうでしょうか?

(立石)

4大リーグ(スペイン、イタリア、イングランド、フランス)以外では、次へのステップアップの位置づけで来ている選手が多い。なのでチームに対するロイヤリティが少し欠けているなと思うシーンもある。

久保:テクニカルな面で、日本と海外のサッカーそのものに違いはあるのでしょうか? 

立石敬之:最近、ベルギーやオランダの選手などは、最初のステップアップとしてポルトガルに行く人たちが多いんですが、ポルトガルはショーウィンドウとして自分の実力を見せるところなんですよ。ポルトガで1年くらい活躍をして、次のチームに行くという感じの選手が多いので、チームに対するロイヤリティがあまりない。なので実際のプレイに関しても、一対一の連続が多いですね。それとSTVVがあるベルギーの場合、オランダ語、ドイツ語、フランス語と3つの言語があるくらい人種がいろいろ入り混じっているので、黒人系のアスリートのような選手もいれば、オランダ系の身体の大きな選手もいる。ですので個は凄く鍛えられるんですが、チームプレイとして考えると少し寂しく感じることはあります。

■サッカー選手として成功するために、4大リーグに行くことは必須でしょうか?

(立石)

逆説的にはJリーグが4大リーグに負けない環境にしたい。そのために海外で得た経験を日本に還元したいと思っている。現状、世界最高峰のリーグはヨーロッパにあると思われているが、世界中の人々に『日本でプレーしたい』と思ってもらえるリーグにすることが目標でもある。

久保:サッカー選手として成功するために、高い志を持っている選手が日本にいるとして、それを実現するにはヨーロッパの育成を重視するというか、4大リーグのような方法でいくのが必須だと思いますか? 

立石敬之:僕はあえて海外に出ていますが、最終的には、海外で得た経験をJリーグへ還元したいと思っているんです。世界中でJリーグが放映されて、選手のギャラもいいし、Jリーグこそが4大リーグに負けないリーグだということを理解してもらえたらいいなと思っています。

久保:あえて日本の外へ出ていき、そこから日本の環境を変えていきたいということですね。

立石敬之:日本人選手が、日本にいてもプレイヤーとしての最高峰を目指せる、プレイのレベルも、経済的にもいろいろな意味でいいリーグになるにはどうしたらいいかを考えていますし、それが自分の最終的なの目標です。

サッカーをやっている日本の子供たちのほとんどが、ヨーロッパでのプレイを希望しますが、それはフットボールの最高峰がヨーロッパにあるからなんですよ。

その中で、どうやったら日本のレベルを上げることができるのか……スター選手がもっといて、競技レベルが高くなって、給料もいい、アジア中の子どたちが日本でプレイをしたいと思えるようなリーグになれると思っているので、それを目標に考えています。それと最近はスポーツ全体がそうですが、W杯を見ても八割がアジアのスポンサーなんです。なのでアジアのスポーツとして、Jリーグが引っ張っていかなくてはならないとも思っています。

久保:Jリーグの基本的な部分を変えていきたい思っていらっしゃるんですね。

立石敬之:Jリーグに行って、そこで育って、最後にJリーグで引退できるまで。Jリーグでも十分高いレベルの中でプレイができて、十分に稼げる、クラブカップでも優勝できた、という感じになればいいですね。

■建設業界に関して、一見、日本に居た方が経済的メリットが大きいように思えますが、それでも海外に出て事業を推進する想いはどこにあるか?

(今井)

日本の建設現場が労働人口が足りなくなる未来はもうそこまで来ている。我々が日本の建設技術、姿勢を伝えに海外へ進出していって、1人でも多くの人に『日本に行きたい』と思ってもらいたい。そして最終的には日本で学んだことを祖国に持ち帰ってもらえるような循環を生み出したい。

また、新興国では日本が経済成長期に経験したことが同じように起きている。例えばワーキングマザーの増加により、子供の預かり先が見つからないような現象がある。保育所併設のオフィスビルが求められていてそれを実際に建てる、社会から求められているものを供給するような事業を展開することが必要だと感じている。

久保:今井さんにお聞きしたいのですが、日本では高層ビルがどんどん建っているので、日本に居た方が売り上げは良いと思いますが、それでも海外へ出て、向こうの人たちへ伝えたいと思うことは何なのでしょうか?

今井豊和:日本人の僕たちが海外に行っても、作るのは僕らの仕事ではなくて現地の人たちであって、僕たちは指示を出すだけになってしまいますが、日本人がもっと外に出て、現地のやり方の仕組みを少しでも変えて、彼らがやりやすい形を教えてあげられると良いなと思います。そして彼らが、いつか日本で働きたいと思ってもらえるようになることが夢です。

それで日本の建設現場は、外国人労働者の力がないと成り立たないことを知ってもらって、そして日本で覚えたことを自分たちの国へ持ち帰って、自分たちの力で建築物を建てられるようになったらいいなと思います。

これまでに僕たちは3つほど建物をモンゴルで作りましたが、いずれモンゴルの人たちが日本で勉強をして、自国へ戻って自分たちで建てるという環境は作ってみたいと思っています。その成長が波に乗ってきたら、小さなものでも彼らが本当に必要なものを作っていけばいいのかなと思います。

久保:「必要なもの」というのは、住宅もですが、現地の人たちが欲しているものでしょうか?

今井豊和:そうです。モンゴルは人口が増えているので、若い人たちの働く先が多くなっていますが、結婚をした後に子供ができて母親が働くとなると、子供たちを預かってくれるところがなく、働けない状況にあるんです。モンゴルでは女性の作業員の方たちも多くなっているので、例えば今後は、大手の会社の中に保育所を作るなど提案できるようになれば、働ける女性も増えていくのではないかと思います。

久保:建物を作って完結するのではなく、街つくりまで考えて、人々が生活をしやすい環境を提供したいという考えですね。

今井豊和:モンゴルは、ウランバートルという首都に人が集まっているんですが、生活環境が悪い人たちへのサポートが悪いので、僕らが日本から向こうへ行った際にモンゴル側での信用を作って、ウランバートル市にいろいろと提案できるようになったらいいなと思っています。日本で言う、子供の支援みたいなことが最終的にできたらと思います。そうすれば貧しいからという理由からではなく、次のステップのためにモンゴルを出ようと思う人たちも出てくるのではないかと思っています。

■ヨーロッパの人から見て、日本のサッカー選手はどのように映っていますか?

(立石)

日本人選手の評価は上がっ来た。ただまだ日本人選手のブランディングが確立されたと言えるところまでは来ていない。そんな中、STVVを卒業した鎌田大地選手や冨安健洋選手、遠藤航選手が評価されているのは日本人選手が投資の対象となった事実である。

また監督目線でいくと、日本人選手は非常に好まれる。ルールを守り、戦術を理解して、忠実に実行する。そのあたりはヨーロッパの選手や、アフリカの選手と違う部分だ。

久保:立石さんにお聞きしたいのですが、ヨーロッパから見て、日本のサッカー選手はどのように映っていると思いますか?

立石敬之:W杯での活躍によって、日本の代表選手に対する評価は凄く上がってきていますが、侮れないというくらいですね。(海外の選手を)本気にさせるかというと、まだかなと思います。もちろんベルギーでのW杯でもありましたけど、日本チームがヨーロッパの人たちをヒヤっとさせるゲームをすることはできますが、日本人選手がブランディングとしてヨーロッパの中で出来上がっているかというと、まだですよね。ただベルギーリーグもそうですが、日本人の選手がブームで今年も増えています。

我々(STVV)の第1回目に卒業をしていった鎌田(大地)、富安(健洋)、遠藤(航)辺りが活躍していることもあるんですが、ビジネスとして日本人選手がこんなにも高く売れて、日本人もスポーツビジネスの対象や投資の対象になるんだということが、ベルギーやオランダでは分かってきています。

なので日本人選手が人気で、スカウトが進んでいるのも事実です。

久保:商品価値として、日本人サッカー選手はどうヨーロッパでは見られているんでしょうか?

立石敬之:日本人選手は監督には凄く好まれます。

しっかりとルールを守るし、戦術に対しても忠実にやる、計算が立って、試合に出られなくても不満を言わずに我慢をしてくれる選手が多い。ヨーロッパや南米の選手の場合、試合に出られないと不満が多いので、マネージメントが大変なんですが、その辺り日本人選手は扱いやすいというのがあると思います。逆に言うと、驚くようなことはしないということもありますが、、、

■アジアから見て、日本の建設業界はどのように見られているか?

(今井)

比べても日本の建設業界の技術は本当に高い水準にある。ただ機能を追い求めすぎて高額になりすぎ、現地のニーズからかけ離れ、実際に消費者の手に届かないような事例もある。

久保:アジア圏から見て、日本の建設業界はどのように見られているんでしょうか?

今井豊和:自分が海外に出て気付いたことは、日本の建設業界は、技術も効率も本当に素晴らしいということです。ただ外から見ていると、必要以上の機能を追い求めていて、何のために、誰のために必要で作ったのかがわからなくなってしまっている感じもします。”規模や機能で競争するのではなくもう社会や顧客に目を向けてみたらどうか”とは思うことがありますね。

久保:日本だとある程度ブランド力のある会社が、どうしても自分の会社のものを売らなくてはならないので、商品に不要なものを足していくようなことがあると思いますが、ニーズを拾えていないということにもなりますね。

今井豊和:例えばウランバートルの場合、空気が凄く悪いので、その部屋の空気が綺麗になれば十分なんですけども、作り上げられた商品にいろいろ機能が付いていることで商品の価格が高くなり、手が出せなくなっているので、モンゴルの人たちに合わせて作ることはできないものなのかなと思ったりはします。

日本は省エネを働きかけて、優秀な開発の人たちが電気や照明を作ってくれますが、売り手の方は、電気料金が下がったからたくさん電気を点けても平気だと反比例なことを言うので、結局、省エネの意味がなくなっています。そこをどう変えていけるのかが課題だと思います。

■各々の業界を代表して、一番実現したいことは?

(立石)

先述したように、Jリーグのブランディングの実現が一番。日本のサッカー産業を大きく豊かなものしたい。ヨーロッパではスポーツは文化であると認識されている。今後どんどん人種や国境の境が無くなる中で、大坂なおみ選手やダルビッシュ有選手のような世界的に活躍される選手が増えてくると思っている。

(今井)

まだまだ道半ばです。ただモンゴルでの事業がひとつ成功した際に、モンゴルという国に恩返しをするべきだと思って、孤児院の修復を行なった。一つ事業を成功させて、一つその国に恩返しをする、そんな循環を続けていきたいし、そのマインドで続けていれば仲間が集まってくると信じている。

久保:各々の業界を代表してお話をお聞きしましたが、立石さんは個人的に、日本のサッカー業界で一番実現させたいことは何ですか? 

立石敬之:先ほども触れましたけど、Jリーグのブランディングですよね。いろいろなことに紐づいていきますが、スポーツを職業にして、それで食べていきたいと思っている人たち……選手、監督、クライアント業務、イベンター、トレーナー、マネージメント会社などいろいろな業種がありますが、やはり産業として膨らみや成長がないと、そこに携わる人たちを食べさせていけないので、サッカーを含め、スポーツの産業をいかにして大きくできるか、それが僕の最終的な夢です。

久保:それはサッカーの日本代表が強くなるためにも必要なことだと思いますか?

立石敬之:必要だと思います。ヨーロッパでスポーツは、文化なんですよ。

社会の中でスポーツの存在が大きくなっているので、これからは更にスポーツを通じて経済圏や人種などの国境が無くなっていくと思います。ですので今後は労働する人たちもいろいろな可能性がでてくるし、海外から日本にどんどん人が入ってくることが予想されるので、あと10年もすれば日本人と外国人との間に生まれてくる子が日本にも多くなると思うんです。今は大阪なおみさんや、ダルビッシュ有さんなどのトップアスリートがいますが、いずれそういう子どもたちが世界的に活躍する時代が間違いなく来ると思いますので。

久保:今井さんはどうでしょうか? 建設を通じて、ご自身で達成されたい夢や目標とかはありますか? 

今井豊和:ひとつひとつ変えていかなければならないところはあると思いますが、僕が最初にモンゴルで仕事をさせて頂いたときは、孤児院を直しました。

孤児院では、ある程度の年令のいった男の子と女の子が、同じシャワー室やトイレを使用していて、同じベッドで寝ていたんです。子供たちに選択する条件がまったく与えられていなかったので、寝る部屋やシャワーを浴びたり着替えたりする場所を別の場所にしたりと少しづつ手を加えてました。

そういったことに力を貸してくれる人たちは世の中にたくさんいると思っているので、もう少し自分たちがやったことを外に発信をして、仲間を作って少しづつでも解決していけたらいいなと思っています。

それが海外へ出て仕事をしている自分の夢であり、実現したいことなんだと思います。

TECRAのロゴは旗なんですが、旗を振り続けていれば、人は寄ってきてくれるし助けてくれる。これからもいろいろなところに出て、発信していきたいと思います。